「女性だからAEDが使われなかった」—この衝撃的な事実が、女性ランナーの心臓停止事件を通じて浮き彫りになりました。2013年12月、地元のマラソン大会で39歳の彩さんがゴール直前に倒れ、心臓が停止しました。迅速にAED(自動体外式除細動器)が運ばれましたが、使用されることはありませんでした。その理由は、駆けつけた救護員が男性で、倒れていたのが女性だったからというものでした。
AEDは命を救うための重要な機器ですが、特に女性に対して使用する際には心理的な抵抗があることが指摘されています。AEDは肌に直接パッドを貼る必要があるため、服を脱がせることに対するためらいや、男性の救助者が不安を感じることが多いといいます。この事件では、AEDの使用が遅れた結果、彩さんは意識障害を残すこととなり、現在も在宅で治療を続けています。
夫の智彦さんは、性別や年齢にかかわらず、誰もが助け合える社会の実現について考え続けています。ネット上では、男性が女性を助けることに対する抵抗感や、痴漢冤罪の問題が取り上げられ、AEDの使用に対する不安が広がっている現状が浮き彫りになっています。
心臓が止まってしまった場合、AEDによる電気ショックが1分遅れるごとに救命率が約10%低下すると言われています。したがって、安心してAEDを使用できる環境の整備が急務です。男性も女性も、命を救うために助け合える社会を目指すために、今こそ意識を変える必要があります。この問題は、AEDの使用にとどまらず、広く社会的な分断を解消するための重要なテーマです。